二宮先生 ご寄稿
 
今後、色々な先生方にご寄稿をお願いする予定です。第1回目の今日は1986年1996年まで文書管理・秘書概論を教えて下さっていた二宮早苗先生にお願い致しました。
 
二十世紀の終りの想い
 華輪会の皆様、昨夏の総会にはお招き下さってありがとうございました。当日は沢山の方にお会いできて嬉しいことでした。皆、明るく立派な社会人となっていて、元教員としては誇らしく思います。
 華輪会も早くも15歳を迎えたので、大まかな捉え方になりますが、皆さんが生きる時代と、私が生きてきた時代とでは、ほぼ半世紀の差があります。今世紀も終わろうとしている今、この差を考えてみました。
 1945年、つまり日本の敗戦です。この直後から日本の社会制度は外国の圧力を受けて、激しく変化し方向転換したのです。例えば、旧制の学校制度では、義務教育は小学校だけで、その上はすべて男女別学で教育内容にも格差があり、女子は旧姓大学の学部への進学は認められず、男女が均等になったのは1946年度のことです。そして教育の自由に向って改革が行われました。今では当りまえの女性の参政権も労働権も、たった半世紀前から始まったことです。
 このように、20世紀の半ばは、政治も司法も経済も貴族院が廃されて参議院が設けられたように、旧来の制度が押し倒され、特権を排して人は皆自由で平等であることを理念として、新しい枠組みが急速に作られた激変の時代でした。戦後の社会は貧しく、丁度勤労の年齢となった私達世代は生活のために夢中でその枠の中で働いているうちに、日本経済は拡大し、労働力も必要とされ、結果として豊かな時代が到来しました。一方では物質優先、マネー尊重の風潮にもなりましたが。華輪会の方達の生誕はこの後の時代になります。
 最近の日本経済は戦後初のマイナス成長となって産業構造の根本的改革が急務と言われ、その対応が行われているところですが、そのうち、私達一般の人にとって、直接影響が大きいのは、個々の企業や団体の経営組織の合理化だと思います。企業は生き残るために利益を求めて、合理化をキーワードに、余分なものはヒトもモノも払い落とそうと、もがいているように見えます。この厳しさが続く21世紀初頭に華輪会の方達は人生のうちで一番働きざかりの時期を迎えるわけです。どんな立場の人でも、人間としての義務も責任も大きくなり、また充実の時期ともなるでしょう。私の世代を見廻すとその時期にまじめに働いた人は、主婦も含めて男も女も大体安定したリタイア生活を迎えてますが、バブルで踊った人には、はた迷惑な人もいます。やはり基本はまじめに働くことかと思いますが、今後はそれだけでは企業内で生き残れるとは限りません。社会のニーズに合った専門知識や技能があれば心強いのですが、誰でもが可能とはいかないので、個人としての対応を考えてみました。@健康第一A自分の頭を使って賢い判断を心掛けるB要らないものは、情報も物も取り込まないC必要なことには労力もカネも惜しまない。わかっていることばかり申しましたが、厳しい時代です。頑張って下さい。
 さて、皆さんが迎える21世紀の半ばはどんな時代になるのでしょう。想像もつきませんが、どんな時代になっても心掛けていただきたい私からのお願いがあります。それは、"品位ある生活"です。皆さんは全員秘書科の卒業生で、人間関係の基礎も作法も学んでいるのですから、誇りをもって生活なさって下さい。
 新しい世紀が、皆様にとって安全で明るい時代となることを心から願っております。ごきげんよう。

(1999年3月 二宮 記)